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恋花火***Special Starmine
第4章 星に願いを
タケルの腕の中で


ふと窓の方に目をやると、


少しだけ開いてるカーテンの隙間から星空が見えた。


「…空、夜色になってる。」


タケルがポツリと呟いた。


「ふふ。タケル昔から言ってたよね、それ。」

「え?なに?」

「夜色、ってやつ。」


タケルは小さな頃から


日が沈み空がだんだん暗くなることを、夜色と表現していた。


そんな言葉はあとにも先にも、タケルの口からしか聞いたことがない。


「私その表現がすごい好きで。使いたいんだけど、私が使ってもしっくり来ないの。」

「ふーん。そういうもん?」

「うん。そういうの、結構あるよ。」


そう、タケルにしか使えない言葉がたくさんある。


例えば"大丈夫"の言葉もそう。


タケルが使うからこそ意味があって、効力を成す。


「…夜色。」


タケルの真似をして呟いてみる。


が、例の如く、なんとなく馴染まない。


「…だから、これからもタケルのその言葉聞きたい」


他の誰かに使ったりしないでね


他の誰かと夜色を眺めたりしないでよ


ねぇ


お願い


「……自分のガキにならいつか言っちゃうかもなー。したらまた菜月は笑うんだろ。また出たそれーとか言って。」


タケルの頭の中のいつかの話に


私はいるの?


もしそうならば、すごく嬉しい。







「……タケル、好きだよ。」


寝顔にそっと囁く。


いつもふざけながらじゃれ合う私たちだけど


今日はなんだかセンチメンタルな夜。


お願い


どうかこのままタケルといられますように


いい子にします


あ、美波には嫌いって言われちゃったけど…


泣かないように頑張るから


だから……


流れ星に願い事をすると叶うっていうけど


私はいつも星よりも何よりも


隣にいるタケルのことばかりを見つめていたから


流れ星なんて見たことがなかった。


…今日もまた


夜色の空よりも


無防備で可愛い、タケルの寝顔を眺めてる。
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