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優しい愛には棘がある
第2章 Moon crater affection
女がソファに腰かけていた。
午前二時の世界を殺める色と同じ、あまねくものを断絶する黒のソファに肉感的な肢体を預けて、女は窓辺を見つめていた。
歳のほどは四十と少しといったところか。切れ長の目許は知性に溢れ、その清冽な眼差しの先に、恋人と少女がじゃれ合っていた。
恋人は裸だ。女と、そして恋人に比べて二周りは年少と見られる少女に敷かれ、蜜にまみれてたわんでいた。
「……淫らな顫えようですね、由多香(ゆたか)お姉様。佐和(さわ)お姉様が近くでご覧になっているから?それとも……このぬるぬるになっているところがどうにかしちゃってます?」
少女のたおやかな眼(まなこ)に切なげな情緒が滲む。
ダークレッドの艶を刷いたショートカットの黒髪が、端整とれた顔かたちの糖度を高める垂れた目尻にいっそ妖しい憂いの影を落とす。サックスのストライプの入ったグレーのシャツに、裾に綿混ラッセルレースのフリルがあしらっている黒いベスト、それから黒いスラックス──…いわゆる皇子スタイルの洋服が、中性的なドールをとりわけ侠気に仕上げていた。
少女の巧みな指の腹が、今し方「由多香」と呼ばれた女の秘口を掬った。
白い指先にまとわりついた淫らなとろみが、露出した陰核に、少女の指の腹を引き合わせる。
少女が女の脚と脚の間にある劣情の蕾を撫でさすれば撫でさするだけ、由多香の胸が上下する。荒い息に苦悶と恍惚がこもっていった。