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優しい愛には棘がある
第2章 Moon crater affection


 商店街を散策してお茶をして、ランチにクレープを買った。

 アーケードの途切れた地点を少し外れた路地裏に、噴水を囲った広場がある。隅に植え込みが設けてあり、座れるほどの石の囲いが巡らせてある。ちょうど木陰が落ちていた。

 二人、そこで少憩をとることにした。



  いづるはブルーベリーチーズケーキ、月子は生キャラメル。各々に注文したネタを、最初は一口ずつ試し合った。



 クレープの包み紙も空になり、それをゴミ箱に投げ入れた時、いづるは月子の得も言われぬ視線を感じた。


「……月子?」


 いづるは視線をちらと動かす。


 鼻の奥がつんとした。今まともに月子の顔を見れば、きっと泣く。


「いつまでこうしていられるのかな」

「どうしたの、急に」

「都合の悪いこと忘れて、いつまで、一緒にいられるかな……いづると私」

「──……」


 いづるの右手が月子の手のひらに顫えた。


 石畳に重なる二つの手と手。


 何かあったのだ。もとより月子から誘い出してくれたこと自体、珍しかった。初めてだった。


 いづるはふっと胸騒ぎを覚えた。

 月子の唇が動き出す。
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