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優しい愛には棘がある
第2章 Moon crater affection
* * * * * * *
夜が明けた。
肌に馴染んだ私室のシーツにくるまれて、泥のような眠りから覚めたいづるの目に、新着メールを知らせる携帯電話のライトが点滅しているのが見えた。
月子からだ。今日会えないかという内容だった。
いづるは月子にメールを返した。学校の最寄り駅で待ち合わせをした。
土曜日の街は賑やかだ。
その浮かれた空気感は、雑駁とした暗いものも消散するのではないかと思えるほどだ。
加えていづるは、育ての両親の欲求を満たすだけの洋服を脱いで、ともすれば妖精のまとうような軽らかなフリルやレースのあしらってあるパステルカラーでめかし込んでいた。
こんな気分なら、ひとときでも自分を許せるつもりになれる。
いづると月子は、好むもの、目を惹かれるものが似ていた。
仮に会話が途切れても、一緒にいれば瞬く間に時間は過ぎてゆこうに、二人して、何かと意気投合しては話が弾んだ。終いにいづるは、早送りの時計に操られている錯覚にさえ陥りかけた。