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優しい愛には棘がある
第3章 Fairy land
* * * * * * *
「妖精は、とても気まぐれ。森に棲む小動物達と同じ……無知で、本能に従順な生き物なんだわ」
生クリームとスポンジの欠片の残ったなしろの指に、真宵の舌がまとわりつく。
理想郷が、二人の視界に結界を巡らせていた。
今日は、咲優もかおりも不在だ。今や真宵が、何かと用を入れている彼女らよりも、ここにいる時間が優った。
真宵は可憐だ。無知なまでに純粋だ。
甘く味つけした指を無我夢中で貪る少女の口内。なしろは真宵の温度を撫でるようにして、指を動かす。
「あたし達は妖精。妖精になり損ねた妖精……。自由に生きることが許されるのは、この場所だけなの。この場所では、あたし達は気持ち良いことだけしていて良いの。人間界で一般と括られてきた概念は、ひと握りの人達が捏造してきた偏見に過ぎない。常識や法律は、本当に必要なものを残せば、きっと十パーセントにも満たない。無駄なものは忘れて良い。綺麗なものだけを見て、甘いお菓子やお茶を楽しむの」
「ここは、妖精界……。人間なんかに来ることは出来ないんですね」
なしろは真宵のさらさらの黒髪に、口づける。海淵の色の絹の隙間から覗いた耳にも同じ愛で方をする。