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優しい愛には棘がある
第3章 Fairy land


「あたしは、半分以上、妖精」

「知っております、なしろ様は美しいから……」

「真宵とこうして二人でいると、楽しい。咲優とかおりは、大事な姉妹みたいなものだけれど……」


 なしろは真宵の唾液にまみれた片手を引っこめて、彼女の小さな頬を包んだ。


「こんなにどきどきして……懐かしいような気持ちになるのは、真宵だけだわ。なんて、言ったら困る?」

「困りません」


 真宵の顔が、なしろの手のひらの間で左右に振れた。


「なしろ様を……独占したい。最近、私、そんなわがままばかり考えています。咲優さんもかおりさんも、素敵で優しい方達だけど」


 真宵が火照ったような目を細めて微笑んだ。


「もっともっと、なしろ様と同じになりたい。私の身体も、魂も、なしろ様でいっぱいにして下さい。この素敵な楽園に、相応しい、もっと妖精らしいものなりたい」


 なしろは、真宵の淡いピンク色のリボンが飾ってあるこめかみに、キスで頷く。


「真宵」

「はい……」

「いつか」


 真宵の目尻に、頬に、唇を移す。

 微かな甘い匂いが鼻を掠めた。

 真宵がくすぐったそうに身をよじる。


「いつか、一緒に帰りましょ?真宵とあたし、二人で」


 伏せた真宵の瞳はあまりに綺麗だ。


 なしろは味わったことのない恍惚に戸惑いながら、それと同時に苦しくもなる。



 いつからだろう。脆弱なこの胸を困惑させる黒曜石に、花ではない、自分だけを映して欲しいと願っていた。



「一緒に……あたし達の本当の故郷(フェアリーランド)へ、帰りましょ」
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