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一族の恥
第1章 お母さんへ
 なあ、お母さん。
 あの晩、あの暗い部屋の、布団の中でな。
 ゆっくり振り向いたぼくの顔を、康生が横目で見たんや。 
 でかい図体に似合わん、幼い笑顔でな。
 ぼくが里奈子のチチにつけた、康生のカタキをとったあの晩につけた、茶色にくすんだ丸い煙草の火傷痕をしきりに撫でながらな。
 康生は約束してくれたんや。



「大輝兄ちゃん。
 安心してや。
 里奈ねえちゃんはちゃんとオレが幸せにするから。
 だって里奈ねえちゃんがオレのほんまのお母さんやないのは、当たり前やけど、はじめから知ってたもん。
 でもオレは里奈ねえちゃんに責任があるから。
 ここまで愛情たっぷりあたえてくれて、ここまで育ててもらった恩を返すっていう、責任があるから。
 だからもう、大輝兄ちゃんは・・・ううん、お父さんはな。
 自由になってええんやで。
 お父さんが責任負うのはオレだけでええねんで。
 オレももう、来年には高校卒業する。
 大人になんねん。
 だからお父さんはもう、楽になってええねんで。
 これからはオレが、ほんまの意味で里奈ねえちゃんを精一杯愛して、幸せにするから」

 
 そんなふうにな。
 17歳らしい幼さの残る顔いっぱいに、決意に満ちた男の表情を浮かべてな。



 ぼくが差し出した、火がついたままの煙草を、里奈子のチチにゆっくり近づけながらな。




 ぼくは2人が終わってから、重なるようにして寝息立てはじめた姿を横目にそっとすり抜けて、アパートを出てった。

 
 仕事転々としてるとき綾香と出会った。
 これでぜんぶ楽になれる思ったのにな。
 人生上手くいかんもんやな。


 ああ、もうしばらくしたら、あの脳天が爆発するような興奮をもう一度味わえる思ったら、さっきからチンコが痛くて痛くてたまらんわ。

 
 この疼きを、この滾りを、あの加害者のツラにぶちまけることが出来たら、ぼくはもうなんも後悔することはないわ。


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