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一族の恥
第1章 お母さんへ
「だって、自分がつくったもの食べて大好きな人が生きてるって、すごいことやん?」って。



 里奈子のやつ、ぼくに言うたんや。



「堕ろしてこい、いちいち聞かんでも分かるやろボケ」て腹んなかの子供の父親である兄貴に言われたらしいから、素直に言うとおりにしてな。



 中絶手術の手続きの書類とか全部もらって帰る、惨めな気持ちの帰り道でやで?



「その人の命が、自分のてのひらのなかにあるような感覚やん?この命は里奈子が預かってるんやって。おなかの中の赤ちゃんがすくすく育ってくような、育てたことないから分からんけど、きっとこんななんかなって想像したら、幸せな気持ちになんねん。お母さんになったみたいで、赤ちゃんを育ててるみたいで、幸せな気持ちに・・・」



 泣きながら、そんなことをな。


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