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一族の恥
第1章 お母さんへ
 里奈子のやつ、言うとったわ。


 自分で腕を切るとな、兄貴に殴られるときのことを思い出すんやって。
 殴られるときは、抱かれるときと違って、自分はなんも悪くないって思えるんやって。
 なんでかっていうと、兄貴に抱かれたら感じてしまうんやて。
 いやでいやでたまらんのに、身体が感じてしまうんやて。
 身体が感じてしまうと、自分が被害者じゃなくなるから、それが怖いねんて。
 ずうっと小さい頃から兄貴に身体弄ばれてたせいで、感じるようになってしもたんやって。
 だから、苦しくなったときは腕を切るんやって。
 自分は何も悪くない、里奈子はなんも悪くないって自分に言い聞かせるために切るんやって。



 里奈子は泣いとった。


 だぶだぶの制服セーターの下に隠れた、たくさんの傷を撫でるように、自分自身のいろんなとこを擦りながら、笑った顔して泣いとった。



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