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The one …ただ一人の…
第11章 親父の企み
山野辺社長は大笑いした。
『曄良ちゃん、良いんだよ、今まで通り斉藤さんと話す感じで。ね。』

「いや、そんな本当に、すみませんでした。」

山野辺社長は、お茶をさすりながら、話を始めた。

『曄良ちゃん。君のお父さんになりたかったのは、私なんだ。』

「えっ?」
曄良は、キョトンとした顔をする。

『曄良ちゃんと家族になりたくて、曄良ちゃんのような娘が欲しくて、息子の日向を焚きつけた。』

そう言うと、ニッコリ笑った。

「そうなんだよ。オレは親父の思惑通りに曄良に出会って、一目惚れした。」

あの日、お見合いみたいな食事会をさせられたあの日、親父は曄良がこのホテルで仕事だと知っていた。
同じ階で挙式がある事を知ってて、あの食事会を仕掛けた。
見合いだったと気が付いたオレが、途中退席するのは目に見えていた。
廊下に出たら、少なからず、曄良を目にするだろうと。
親父は、オレに曄良を見せたあと、曄良と見合いをセッティングするはずだった。
たが、オレ達はぶつかり、会話して、オレはすっかり惚れてしまった。もう一度会いたいと思った。
見合い、ふざけるなと言ったオレに親父は曄良の居場所を教えた。

『曄良ちゃん、ごめんね。黙ってた事を謝罪するために、今日は来てもらったんだ。』
『本当に申し訳ない。』
山野辺社長は、曄良に向かって深々と頭を下げた。

「あっ、頭を上げて下さいっ。困ります。」
山野辺社長は、申し訳なさそうに、曄良を見つめ、向かいの席に座った。

「ビックリして…でも、日向と、日向さんと出逢えた事が、山野辺社長のおかげなら、お礼を言います。ありがとうございます。」
曄良は、頭を下げた。
『曄良ちゃん』
山野辺社長は少しホッとした顔をして、曄良に微笑んだ。
「本当に親子して…」

そう呟いた曄良の言葉に、日向の顔が強張る。
日向は思い出した、プロポーズの時自分の身分を隠していて、曄良が怒って出て行ってしまった事を。

『曄良、この事はオレも最近知ったんだ。オレから曄良に説明するって言ったら、親父がどうしても自分で言うって聞かなくて。ごめん。』

キョトンとして日向をみた。
曄良はクスクス笑いだした。

「大丈夫。この前みたいに怒って出て行ったりしないから。」
日向は曄良の手をギュと握った。
絶対に離さないからね。と言った。
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