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The one …ただ一人の…
第13章 トラウマの元凶
『オレの女に何してる?』
低い声が響いた。
曄良はその声に涙が溢れた。
ここに来るはずのない人がそこにいた。
日向…なんで?
「なんだ、お前。」

『オレは曄良の婚約者だ。』

田城は、その目の前の男を見た。
明らかに曄良より若いだろ、こんなに若造と婚約?バカバカしい。

「お前みたいな若造と婚約?」
はっ笑わせるなと、曄良の頭を掴みキスをしようとする。
日向は男の脇腹に軽く蹴りを入れ、怯んだ所で、曄良の腕を引くと自分の背中に匿った。

「邪魔するなよ。何なんだ、若造のお坊ちゃんが曄良を幸せに出来る訳がない。僕はグランドリアホテルの専務だ。身分を弁えろ!」

日向は、軽く鼻で笑った。
『あーグランドリアホテルね。確かに良いホテルだが、専務がこの器じゃ…』
「なっ」
日向は低い声で言った。

『オレは若造だ、身分をひけらかすのも嫌いだ。でも、曄良を守るためなら、教えてやってもいい。』

背中で、曄良がスーツを引っ張る。きっと止めてるんだろう。だけどね。曄良、オレはさっきの告白、本当に嬉しかったんだ。だから、言わせてよ。曄良を守る為に…

『オレは山野辺日向、山野辺グループの社長、山野辺泰三のひとり息子。これがどう言う意味か、専務さんにもわかるよね。』

田城の顔色が真っ青になった。

「なっ…なんで……」

日向はニヤリと笑った。

『そう言うことだ。曄良は返してもらうよ。』
『二度と、近付くな!』

唸るような声でそう言うと、日向は曄良の腰に手を回し、店を後にした。
田城は唇を噛み締め、悔しそうに去って行く二人を見ていた。
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