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The one …ただ一人の…
第13章 トラウマの元凶
あれから、2週間が過ぎた。
田城は提携の件で一回、crownを訪れたが、社長が正式に断ると、諦めて帰っていった。
曄良に話かける事もなく、もう諦めたかの様に思えた。


山下は、曄良の職場の前で、曄良が出てくるのを待っていた。
「お待たせしました。」
相変わらず、可愛い笑顔を山下にむけ、山下も心がほっこりする。
スマートにドアを開け、エスコートすると、曄良は車に乗り込んだ。
あの日以来、曄良が乗るのは後ろの席になった。
山下からの申し出だった。

「ストッパー掛からなくなると困るので。」

と山下はニッコリ笑っていた。

日向の様子や、曄良の職場の話をしながら車を走らせていると、ふと曄良の携帯が鳴った。
怪訝そうな顔をする。

「どうかしましたか?」
『知らない番号で…クライアントさんかな?』

電話に出る、その電話の声に顔が強張った。

「もしもし。そのまま、普通にしろ。その車は盗聴している。余計な事は喋るなよ。」

『はい。』

その声は、田城だった。

「お前の大事な王子様は、僕が預かった。帰して欲しければ、グランドリアホテルの1025号室まで一人で来い。タイムリミットは1時間だ。余計な事したら、命はない。」

『わかりました。では。』

出来るだけ明るい声で、曄良は電話を切った。

『仕事の相手でした。』

と言うとニッコリ笑って、紙とペンを出した。
暫くすると、ライルに着いた。何時もの様に曄良を降ろすと、山下は言った。

「少し、顔色悪くないですか?」
『ちょっと、仕事でトラブルがあって…でも、大丈夫です。』
そう言うと、曄良はニッコリ笑った。

そうですか?では、また明日お迎えにあがります。
そう言うと、曄良にお辞儀して車に乗って、走り出した。

曄良は車を見送ると、そのままタクシーを拾う。

『グランドリアホテルまで、お願いします。』

罠かも知れない。
でも、本当だったら…。
山下さんなら、きっと気付いてくれる。
祈る様な想いで、曄良はグランドリアホテルに向かった。
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