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The one …ただ一人の…
第15章 婚約者
振り返ると、山下が立っていた。
「山下さん、歩いて大丈夫なの?」
『山下、お前寝てないと……』
山下は、ゆるゆると座り込み、土下座した。
「すみませんでした !お二人を守るのが私の役目なのに!本当にすみません!」
日向も、曄良も、面食らった表情をした。
山下は、頭を床に擦り付け、泣いていた。
『頭を上げろ。』
山下は身動きしない。
『命令だ、頭を上げろよ。』
山下はゆっくり頭を上げた。泣いている。
『お前が機転を利かせて、予備の携帯、曄良に持たせてなかったら、たぶんまだ見つかってなかったんだ。』
お手柄だよ。山下。そう言って、山下の肩に手をやる。

「山下さん、傷大丈夫ですか?」
山下は、ウルウルした瞳を曄良に向けた。
「私の事など心配なさらないで下さい。今度からは、迷わず逃げて下さい。お願いします。」
「嫌です!逃げません!傷ついた人を見捨てて逃げるなんて出来ません!」
『だって…さ。』
諦めろ、山下……日向はクスクス笑った。
「日向さん?笑ってる場合じゃ……」
『そもそも、一番の原因は親父なんだ。だから、信用ならないんだ、親父は……』

「悪かったな?信用ならない親父で。」
振り返ると、山野辺社長が立っていた。

「申し訳なかった。」
親父は深々と頭を下げた。
「こんな大事になると思ってなかった。もっと気を付けておくべきだった。本当にすまない。」

「頭を、上げて下さい。」
曄良が言った。
「曄良ちゃん…だが……」
「結婚の挨拶に伺った時、覚悟はしていますとお伝えしました。」
雪乃さんとも、約束した。強くなりますと。
「だから、私は大丈夫です。」
そう言って、曄良は笑顔を見せた。

日向も、山下も、山野辺も、曄良の強さに救われた。

真希は警察に捕まったが、精神科通院中のため、すぐに釈放になると警察から話があった。山野辺社長は、真希の母親である弥生さんと相談して、イギリスの精神科に入院の手続きを取った。お互いに、距離を保ちたかったからだ。真希の取り巻きの男は、ヤクザで、金で雇われていたらしい。しばらく、警察の厄介になるだろう。

『色々と、ありがとな。親父。』
「私が蒔いた種だからな?」
そう言って、桜井と二人で帰って行った。
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