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The one …ただ一人の…
第17章 山下の気持ち
「あっ、でも過信しないで下さいよ。過労でも死ぬ事はありますから。適度に……して下さいよ。」

『あっ、はい。』
曄良は頬を染める。
「彼氏さんも程々にして下さいよ。」
先生が山下の方を見て言った。
あっ、先生違います!と言おうとした時、山下さんが曄良の肩を抱いた。
えっ…?
『今日は、ありがとうございました。』
と頭を下げた。

「あっ、あの…」
診察室の扉を開けると、肩を抱いたまま山下は何食わぬ顔をして、診察室を後にする。

「山下さん?」
『えっ?』
もうちょっとだけ、このままで良いですか?
と肩を引き寄せる。
「誤解されますよ?」
『誤解されたいんです。』

曄良は呆れた顔で、山下を見上げた。
『そんな顔、しないで下さい。診察室で間違われて、ちょっと嬉しかったんです。』
もう、日向さんに見られたら…。
『だから、西園寺さんにお願いしたいです。』
絶対に脱走出来ないですからね。
と意地悪そうに笑った。

「とりあえず、日向に報告しますね。」
と曄良が携帯を取り出すと
『えっ』
と言って、慌てて肩を離した。

「あっそっちじゃなくて、検査結果の……」
山下は、ホッとした表情になり、じゃぁ、と言って再び肩を抱き寄せた。

「もしもし、日向?」
『あっ、曄良っ!どうだった?』
「うん、過労だって…」
『過労?って……』
「体には特に異常ないって言ってたから。」
『そっか、ひとまず、安心だな。』
「うん。」
大事な事、言わないんですか?
と山下が急かす。


電話の向こうで、コソコソ話してるのが気になって、日向は、イライラした。
『山下と何コソコソ話してるんだよ!』
「山下です。」
『なんで、お前が!』
「先生に、彼氏さんも程々にして下さいよ!と嫌味っぽく言われました。」
『あっ?』
「エッチも程々にしないと、命に関わるという事です。聞いた事ありますよね。過労死!」
『過労死って……』
山下は少し強い口調で言った。
「今日は、曄良さん、ゆっくり休んで頂きますので。西園寺さんと仲良くして下さいよ。では!」

ツーツーツー

『切れた。山下の野郎!』
曄良の声、最後に聞きたかったのに……山下めっ!
不意に背後に殺気を感じる。
『あ…西園寺さん……』
「休憩……と言った覚えはありませんが?」
日向は、そそくさと仕事に戻った。
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