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The one …ただ一人の…
第17章 山下の気持ち
山下は、曄良の頭を抱えて上を向かせる。
『振ろうとした罰ですよ。』
そう言って、曄良の唇に、自分の唇を重ねた。
「ん…」
曄良は涙が溢れ頬を濡らした。
『たまに、貴女に触れられれば、私は、最期迄の快楽はいらない。だから、どうかこのままで。』
山下に抱きしめられながら、曄良は何度も頷いた。


日向は、西園寺の扱きに耐えていた。
『終わりました。』
「あっ、残念。ここ違いますね。」
『なっ、直します。』
西園寺は、日向の真後ろに立ち、腕を組んで、日向の仕事振りを見ていた。
「日頃から、真面目にお仕事されていれば、こんなに堪らないのに。山下は、貴方に甘過ぎる。」
『はあ……』
たぶん、山下はオレに甘いんじゃない。
曄良に甘いんだ。
アイツは曄良に惚れているから。
日向が、山下の気持ちに気が付いたのは、だいぶ前の事。
日向は山下を問いただした事がある。
アイツはあっさり吐いた。

「はい、好きですけど、何か?」
と、あっさり認めた。
『曄良目的で、オレの秘書か!』
あ、ダメでしたか?
そうシレッとした顔で、言いやがった。
『あわよくば…と思ってるのか!』
「それは、思ってません。」
『あっ?なんで?』
怪訝そうに山下を見る。

「私は、ただ、曄良さんの側にいれれば良いんです。」

『恋愛とか、彼女欲しいと思わないのか。一緒にいたいとか。』

「一緒にいたいのは、曄良さんですが……でも、副社長のモノですので。それで良いと思ってます。」
『はっ、じゃお前は一生独身か?』
「はい。それで構いません。」

そう言って、ニッコリ笑う。
『お前……』
それは、無償の愛というやつか。
「側にいれば、曄良さんが幸せになれるよう、動けます。貴方の秘書なら尚更動きやすい。という訳です。」

『あくまでも、曄良中心なんだな。』
フンと鼻で笑う。
「すみません。でも、秘書の仕事はきちんと……」
それは。
『わかってる。優秀だよ。』
山下は完璧にこなしている。
「首に……しますか?」
『えっ?』
「曄良さんに邪まな秘書は、信用できませんか?」
日向は、山下に視線をやると言った。
『オレに何かあったら、アイツを守れるのはお前だろ。』
「副社長に何かあったら、曄良さんが泣きます。だから副社長もお守りします。」
日向はため息を吐いた。

『お前には、負けたよ。』

日向は、頭を掻きながら山下に言った。
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