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The one …ただ一人の…
第20章 過去
静かに教会のパイプオルガンの調べが響く。
正面の扉が開かれる。
後ろには、日向が説得してくれた双子が、緊張してベールを持っている。
兄の譲と腕を組み、一歩一歩、歩いて行く。
時々、曄良は兄と目が合い、涙が込み上げてくる。
『泣くなよ。』
小さい声で、囁く。
この兄に、守られて生きてきた。
そんな想いが、溢れてくる。
兄の色んな表情が思い出される。
「お兄ちゃん……」
『ん…』
「ありがとう。」
『ん…』
日向が緊張と喜びが入り混じった表情でこちらを見つめている。
譲は日向に言った。
『大事な妹だ。泣かせるなよ。』
「今日から、貴方の代わりに、曄良を守ります。」
そんなやり取りに、曄良は泣きそうになる。
潤んだ瞳で二人を見つめる。
譲は曄良の腕を取ると、日向へ手渡す。
日向は軽く頭を下げる。
ベールから見える曄良の瞳を見つめると優しく笑う。
曄良も、ゆっくりと微笑んだ。
式は厳かに始まった。


挙式が終わり、披露宴の準備が始まると、途端に忙しくなる。
写真撮影、着物の着付け、そしてまた写真撮影。
本当にハードだ。

曄良は白無垢姿もまた格別。
『和装もいいな。曄良似合うよ。』
日向が見惚れていると、後ろから声を掛けられた。
「ほらっ、やっぱり和装、良かったでしょ?」
『母さん。』
親父に車椅子を押され、日向の母がやって来た。
「私の思った通り。曄良ちゃん本当に似合うわ。」
ありがとうございますとはにかんで笑う。
オレには?と日向が拗ねる。
『日向も似合ってるわ。』
なんか次いでだなぁ。
やっぱり主役は花嫁だよな。

ご親族様は、こちらへ並んで下さい。

「あれ、お兄ちゃんは?」
『あ。オレ呼んでくる。』
そう言うと、日向は控え室に歩いていく。さっき見かけたのだ。
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