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The one …ただ一人の…
第6章 危険な香り
「日向!」
病院の廊下で項垂れている日向に声をかけたのは、曄良の兄、譲だった。
『マスター…』
「情けない声出すな。曄良は大丈夫だ…」
そう呟き、日向の肩に手をやるが、お互い震えているのがわかる。
事情は結城さんから聞いた。
彼女と寄りが戻ったと油断させ、会議室に通してもらった安井は、曄良の目を盗んでお茶に薬を盛った。
カギが開かないように、速乾性のボンドを鍵穴に仕込んでいた。
曄良は抵抗する術を失い、辛うじて動いた口で抵抗を示した。
舌を噛み切ろうとしたんだ。
死んじまうだろ!馬鹿っ!
ただ、しびれていたから、口もそんなに力が無く、命に関わる状態まではならないと医者に説明を受けた。
暫くして、オペ室のドアが開いた。
『曄良っ!』
呼ぶと薄っすら目を開け反応を示す。
「麻酔が効いているので、暫くは朦朧とした状態です。あと1時間もすれば意識もはっきりしますから。」
看護師から伝えられ、病室に案内された。
曄良は、ぼんやり夢を見ていたが、遠くで日向の声を聞いた。
「…ひ…な……た…」
曄良はゆっくりと目を開けた。
目の前には日向の顔があった。
涙でボヤけて表情がよく見えない。
そっと手を出し、日向の頬に触れた。濡れてる…。
泣いていたの?
「ひ…日向…」
『良かった。生きてる。良かった。』
医者に大丈夫と言われていたが、なかなか目覚めないから、色々と妄想し、日向は不安にかられていたのだ。
そんな時、突然曄良の目から大粒の涙が流れ出た。何か言っているが、わからない。必死になって曄良の名前を呼んでいた。
「私……あっ……」
急に曄良の表情が曇る。
「ごめんなさい…油断して…あんな事になって…本当にごめんなさい。あんな男に触られて…」
そこまで言うと、泣き声が嗚咽にかわった。
『大丈夫。これからいっぱいオレが触るから。あんな奴の感触思い出せないくらい。上塗りしてやるから。』
「ごめん…っ…」
そして日向は泣いている曄良にそっとキスをする。そして言葉を続けた。真剣な顔で。
『曄良。一つ約束して。今後、どんな最悪な状況に陥っても…。絶対に死ぬ様な行為をしないで欲しい。どんな曄良でも、大好きだから。オレの気持ちは変わらないから。たとえ何があっても…だから死ような事はするな。』
曄良はコクリ、コクリと泣きながら頷いた。
『本当に、生きてて良かった。』
そしてまたキスを落とした。
病院の廊下で項垂れている日向に声をかけたのは、曄良の兄、譲だった。
『マスター…』
「情けない声出すな。曄良は大丈夫だ…」
そう呟き、日向の肩に手をやるが、お互い震えているのがわかる。
事情は結城さんから聞いた。
彼女と寄りが戻ったと油断させ、会議室に通してもらった安井は、曄良の目を盗んでお茶に薬を盛った。
カギが開かないように、速乾性のボンドを鍵穴に仕込んでいた。
曄良は抵抗する術を失い、辛うじて動いた口で抵抗を示した。
舌を噛み切ろうとしたんだ。
死んじまうだろ!馬鹿っ!
ただ、しびれていたから、口もそんなに力が無く、命に関わる状態まではならないと医者に説明を受けた。
暫くして、オペ室のドアが開いた。
『曄良っ!』
呼ぶと薄っすら目を開け反応を示す。
「麻酔が効いているので、暫くは朦朧とした状態です。あと1時間もすれば意識もはっきりしますから。」
看護師から伝えられ、病室に案内された。
曄良は、ぼんやり夢を見ていたが、遠くで日向の声を聞いた。
「…ひ…な……た…」
曄良はゆっくりと目を開けた。
目の前には日向の顔があった。
涙でボヤけて表情がよく見えない。
そっと手を出し、日向の頬に触れた。濡れてる…。
泣いていたの?
「ひ…日向…」
『良かった。生きてる。良かった。』
医者に大丈夫と言われていたが、なかなか目覚めないから、色々と妄想し、日向は不安にかられていたのだ。
そんな時、突然曄良の目から大粒の涙が流れ出た。何か言っているが、わからない。必死になって曄良の名前を呼んでいた。
「私……あっ……」
急に曄良の表情が曇る。
「ごめんなさい…油断して…あんな事になって…本当にごめんなさい。あんな男に触られて…」
そこまで言うと、泣き声が嗚咽にかわった。
『大丈夫。これからいっぱいオレが触るから。あんな奴の感触思い出せないくらい。上塗りしてやるから。』
「ごめん…っ…」
そして日向は泣いている曄良にそっとキスをする。そして言葉を続けた。真剣な顔で。
『曄良。一つ約束して。今後、どんな最悪な状況に陥っても…。絶対に死ぬ様な行為をしないで欲しい。どんな曄良でも、大好きだから。オレの気持ちは変わらないから。たとえ何があっても…だから死ような事はするな。』
曄良はコクリ、コクリと泣きながら頷いた。
『本当に、生きてて良かった。』
そしてまたキスを落とした。