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第1章 出逢い

そろそろ帰るね。そう言うと店を出ようとする。
日向が慌てて追いかけてくる。
「曄良さん、忘れ物！」
傘を持って日向が走ってきた。
「あっ、ありがとう。」
日向は扉を押さえながら、曄良が出るのを待った。
彼女が振り返ると、
「この前ホテルで、助けてくれたの、日向くんだよね。」
と言われた。
胸がキューッと音を立てていく。
おっ覚えててくれたんだ。
『わっわかりました？オレは直ぐに気が付いたんだけど、こんな所で会うと思ってなかったから、』
日向は、本当は狙ってたけど。と心の中で呟く。
「あの時はスーツだったよね。雰囲気変わるね。声を聞いたら、すぐにわかったよ。」
少し俯いて、頬をピンクに染めた。
照れてる。可愛い……。
きっと今オレ、凄いニヤけた顔をしている。
『覚えててくれて、嬉しいです。』
「私も、また会えて良かった。」
『えっ…』
言ってしまってから、曄良の顔は真っ赤になった。
また、会えて良かったって…
あ…それはどういう意味ですか。もしかして…
このまま、抱きしめたくなる。再会のハグしたい。

『寒いです。』
マスターの声が背後でして、日向はビクッとした。
マスターが曄良に向かって手で早く行けと合図する。
曄良は少しはにかんだ笑顔で、またね。と言って帰って行った。

『知り合いだったのか？』
「いや、この前別の場所で転びそうになった彼女を助けた事があって」
『一目惚れしたのか？』
「なんで、それを！」
言ってしまってから、口を押さえる。
『顔、見ればわかる。』
「でっ、でも、マスターと仲が良いから……お二人は付き合ってたりするんですか？」
『さぁな』
「はぁ？さぁなって何ですか？もしかしてマスターも片思いですか？」
『お前と一緒にするな。』
そう言うと、店の中に入っていく。
日向は、マスターとの関係は気になったが、彼女にまた会えた事に喜びを噛みしめていた。