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The one …ただ一人の…
第8章 波乱のプロポーズ
曄良は、困っていた。
距離をおこうといった相手が、毎日アルバイトに来てるから、否応なしに目にしてしまう事に。
兄に詰め寄ったが、だって死んじゃうって言うから。と冗談めかして、はぐらかされた。
「もうっ、なんだかんだ言って仲いいんだから。」
苛立ちと愛しさと、入り混じった感情の中、スーツを着て部屋を出た。
今日から仕事に復帰する曄良は、外階段から行こうと思ったが、今朝は譲が意地悪をし、朝食を店に用意してあるからと言われ、止むを得ず、ため息を吐きながら1階に降りる。

「あっ、曄良さん。おはようございます。」
『おはようございます。』

そう。距離を置こうと言ったあの日から、曄良から曄良さんに呼び方が変わった。
そんな事が胸に突き刺さる。
私が距離を置こうって言ったのに。
後悔の念に駆られる。
朝食をサッサと済ませ、席を立つ。

「行ってらっしゃい。」

日向は、扉を開けてくれる。

『行って来ます。』

日向のとびきりの笑顔に見送られながら、曄良は複雑な気持ちを抱えたまま、店を後にした。


「マスター、曄良さんが行って来ます。って言ってくれた。」
ほんのり頬を染めて、嬉しそうに報告してくる日向。
お前は乙女か?と突っ込みたくなる。
曄良、こいつはまだ諦めてないぞ。
お前は…
呼び方が変わっただけで、動揺して…
お前はそれで良いのか……?

マスターはフッと笑った。
オレはどっちの味方をしてるんだろうなぁ…
そう思いながら、日向の肩を掴むと、励ますようにポンと叩いた。
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