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The one …ただ一人の…
第8章 波乱のプロポーズ
曄良が中学3年の秋、母親が事故で亡くなった。
急な死を受け入れられなかった父親は、女を取っ替え引っ替えになって、家に帰らない事が増えた。
である日を境に、二度と帰ってこなかった。

マスターは既に社会人になっていて結婚もしていたが、そんな状況になって曄良が1人になってしまい、マスターは妹の面倒に没頭し始めた。
曄良はあの性格だから、そんな兄を心配していた。私は1人で大丈夫だからと。
そんな矢先マスターの嫁さんの浮気が発覚し、結局、離婚する事になった。
曄良は私のせいだと自分を責めた。でも、既に夫婦生活は破綻してた。遅かれ早かれ、別れる事になってた。
マスターは脱サラして、この店を出し、常に曄良の側に入れる環境を作って、今日まで見守ってきた。

『なんで泣いてるんだ。泣き虫だな?』

日向の頬に涙が伝った。

「すみません。なんか壮絶で。」

そうか?多かれ少なかれみんな色々あるだろ。

『お前だって、お前の苦労があっただろ?』
「でも、比べ物にならない。」

『親父が帰らなくなったのを俺は暫く知らなかったんだ。アイツ、俺に気を遣ってそんな事になってるって一言も言わなかった。』

「えっ、じゃなんでわかったんですか?」

『アイツの通ってた学校から、連絡が来た。暫く学校に来てないと。父親の携帯にもかけたが、解約されていて連絡つかないって。それでビックリして実家にいったら、ソファに座ったまま、意識なくなってた。』

「えっ」

『金もなくなって、食べる物もなくなって、何日食べてなかったのか知らないけど、水道も電気、ガスも止められて、あと1日発見遅かったら、お前、曄良と会えてなかったな。』

「マスター…」
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