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The one …ただ一人の…
第8章 波乱のプロポーズ
『曄良は、そんな環境で育ってきた。お前とは、育ってきた環境が違う。』
日向は、真っ直ぐにマスターを見た。
『多分戸惑ってるのはそれもある。あまり、自慢出来た過去じゃ無いし、家族関係最悪だしな…』
結婚となると、家柄とか、色々絡んで来るだろ?
それも、お前が育って来た家じゃ、余計に考えるだろ?

「そうですね……」

『ただ多少の事じゃビクともしない土台を持っている。ああ見えて強いし、正義感の塊だしな。』

そういえば、前に高校生助けてチンピラに喧嘩売ってたっけ。

「曄良、腕っ節強いんですね。」

ああ、空手に、合気道に、護身術もやってたかな?
昔から習ってたんですか?と聞くと、その返事は意外だった。

『仕事始めてからだよ。なんか結婚式って結講修羅場になりやすいらしくてさ。いろんな輩きが乱入してくるんだと。前に花嫁の昔の男が刃物持って乱入してきて、あいつ花嫁庇って腕切りつけられて。その後だったかな、、クライアントを守れる様にならないとって、空手教室やら護身術みたいなのに通い始めたの。』

それだったんだ。思い出していた右腕にうっすら残ってた傷跡。なんとなく聞けなかった。傷跡の事……

『その怪我した時も、鍛えて無かった自分が悪いって、怪我なんかして、花嫁に心配かけたって、物凄く後悔してたよ。アイツは、そういう奴だ。』

そして、ふと思った。

「なんか、わかった気がします。曄良さんに怒られた理由。」

一つは、嘘ついてた事。オレの身分なんて関係なく、生身のオレを見てくれてたのに。
それともう一つ。

きっとオレは曄良を守らなきゃと、そればっかり思ってて。でもきっと曄良は一緒に戦いたかったんだ。守られるだけじゃなく。一緒に…。

「なんか、ますます惚れました。」
頭を掻きながら、そう告げると、
マスターは、しまったという顔をしたが、すぐにクスクス笑い始めた。

『あいつ、今日メチャメチャ機嫌良かったぞ。なんでかねぇ…』

えっ、そうなんですか?
思わず目が輝いた。
ああ。なんか胸がいっぱいになった。早く曄良さんに会いたい。
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