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The one …ただ一人の…
第9章 退院祝い
俯いてしまった曄良に、日向は少しはしゃぎ過ぎてしまったと思い、反省する。

「ごめん。曄良の退院が嬉しすぎて、はしゃぎ過ぎました。ごめんなさい。」

反応がない。ヤバイ。本当に怒らせちゃった??

「あの、曄良?本当にごめんね。」
車を一旦止めて、助手席の曄良を心配そうに覗き込む。
「機嫌なおして?」
『…で…いい…』
「えっ?」
『お持ち帰りでいいです…でも、優しくしてね。』
そこまで言うと、曄良は耳まで真っ赤になった。
ああっ、可愛い、可愛い、可愛い。
「あの、ギューってしても良いですか?」

『はい…』

ああこの人はどれだけオレを煽るんだ。
そう思って、曄良を抱きしめる。
曄良の頭に手をやり、抱えるようにキスをした。
優しく、啄むようなキスを…。

突然、携帯の着信音がする。
『ねっ、鳴ってる。』
「うん、もう少しだけ」
鳴り止まない携帯に根負けし、舌打ちしながら電話に出た。

「はいっ」
『もしもし〜お楽しみの所だった?お前、退院祝い企画したの後悔してるんだろ?でも、もう皆んな揃ってるし、もうそろそろマスター限界かも。』

と朋也が言うと、横でマスターが貸せ!と携帯を奪い取ろうとしている。

「おいっ!俺の妹にそれ以上、手出したらぶっ殺す!早く来い!」
ツーツーツー

どうしたの?
曄良が聞いて来た。
「マスターが、妹にそれ以上手出したらぶっ殺すって。」

えっ?曄良が言いようのない表情になる。

「オレ、今日、お持ち帰り出来るのかな…。不安になってきた。」
日向は、顔色が青くなった。

『とりあえず、行こう?』
そうだな。と車を走らせる日向の顔が少し強張っていた。
『大丈夫?』
そう言って、日向のほっぺにチューした。
頬に手をやり、曄良を見つめた。
『日向、前。』
ああっ。
曄良。煽りすぎだよ……心で呟くと今度こそ、店に向かって走り出した。
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