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The one …ただ一人の…
第9章 退院祝い
微笑ましいわねぇ。ねえ朋也くんもそう思うでしょう?
すっかり酔っ払いと化した結城さんが、朋也くんの腕を捕まえてこっちに来た。
「結城さん、そんなに呑んで大丈夫ですか?」
『んーっ、大丈夫!今日は旦那が迎えに来るから、えへへっ』
あーダメだ。すっかり出来上がってる。
連れられている朋也くんも、結構酔ってる。
「曄良さん!あー曄良さんだぁ!」
「日向に飽きたら、俺待ってますからねーっ。だって…だって…俺あきらさぁーん」
抱きつこうとする朋也を必死になって抑えてる日向。
『お前っ、いい加減にしろよー』
マスターも遠くからもっとやれ!とか言ってるし。
ここは敵地か??何なんだ。どいつもこいつも、曄良にまとわりついて。

既に退院祝いと称したただの飲み会となった会場。
もうそろそろいいだろ。
日向はすっと立ち上がり、曄良に声をかける。
『曄良、これ以上ここにいると危険だ。出よう。』
えっ?
曄良の膝の上には双子が居座り両方から膝枕で寝ている。
ああ。オレの特権が、みんなに奪われていく。
曄良は、双子を起こさないように、そっと立ち上がり、日向に肩を抱かれて、店を出ようとした。

ふいに肩を掴まれた。
「どこへ行く?お前の家は2階だろ?」
マスターが眉をひそめて、曄良に言う。

お兄ちゃん?酔ってる?
いつも、お酒あまり呑まないのに。

ちょっと、来い!
腕を掴まれて、厨房に連れて行かれる。
日向も着いて来ようとするが、来るなと言われる。

「ねえ、お兄ちゃん酔ってるでしょ。大丈夫??」
『酔ってない。俺はシラフだっ。』
いやどう見ても酔ってるでしょ?
曄良を壁に追いやると、言った。
『アイツで、いいんだな?』
お酒臭いけど、すごい真剣な眼差しで見つめられる。
『俺が、手塩にかけて育てたお前があの男を選ぶんだなっ』
曄良は譲を見つめた。
『アイツに抱かれるのか?』
「お兄ちゃん?いい加減にして」
曄良は顔が赤くなる。
『それで、幸せなのか?』
「幸せだよ。」
『曄良、、、』
そして、次の瞬間お兄ちゃんは私を抱きしめた。
『なら、それでいい。』
「お兄ちゃん?泣いてるの?」
『泣いてない。引き止めて悪かった。気を付けて行けよ。』
そう言うと、私を離して厨房から出て行った。
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