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歪んだ三重奏 ~ドS兄弟に翻弄されル~
第20章 猫と、彼の闇


スッ──と彼が下に手を差し出したのは

ちょうど猫が、椅子の脚に前足をのせて背伸びをした時である。

ここまでくると、ミレイは驚きを隠せない。

あの面倒臭がりなカルロが、追い払うでもなく無視するでもなく……。


“ 抱いてる…!! ”


片手で抱けるほどの小さな猫だ。

腕に掴まったその猫を持ち上げ、彼は太ももの上にのせている。

毛を撫でる優しい手も、ミレイの角度からしっかりと見えた。


ニャー、ニャー


猫は背中を撫でられながら、彼の手を触ろうと身体を捻っている。

そのままくるりと一周し
脚の上で仰向けになった。


「……ぃぃな」


ボソリ、見守るミレイから本音がこぼれる。


あんなに猫になつかれているカルロが

そして

あんなに構ってもらえるぶち猫が──。




.....




「──…」



しかし

猫が腹を出して仰向けになった時、カルロは撫でる手を止めた。



頭をたれて、膝上の小動物を捉える視線。


ふせた目蓋は、はるか昔の記憶を辿るように


幽かに震えた睫毛は、その記憶に怯えたように



“ …どうかしたのかしら ”



ニャン



猫の腹に置かれた細く長い指は、この生き物の体温をその肌越しにじっと感じている。



指先から伝わるぬくもり──


それは、生きている証( アカシ )。






「──…だから」



カルロの唇から、低くこもった声が零れる。




「……だから…忠告してやったのに…」


「──…!?」



カルロの指が、ふわふわとした腹の毛を滑る


そして顔の下を撫でるように包むと、次の瞬間──力を籠められたその指が猫の首を絞めていた。






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