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歪んだ三重奏 ~ドS兄弟に翻弄されル~
第26章 迎え─ミレイの選択

スーツといってもガードマンの正装とは全く違う。
高級紳士服と呼ばれる上質なスーツをきっちりと着込み、この蒸し暑い季節にも関わらずネクタイをしめている。
ミレイよりもずっと歳上のその男は、ブラウンに染めた髪を小綺麗に固め、まさに紳士の装いだった。
葉巻でもふかしていそうである。
「……?」
ミレイは彼に認識がなかった。
「わたしが枢木ミレイですが」
「……」
「失礼ですが、あなたのお名前を伺っても…?」
以前に会ったことがあっただろうか。
しかし、その装いも雰囲気も、どう見たって自分とは違う身分の人間だ。
こんな人と関わった記憶が全くなかった。
「名乗ったところで、君はわからないと思うが」
それが男の第一声。
彼はソファから腰を上げ、名刺を取り出すとそれを彼女に手渡した。

