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歪んだ三重奏 ~ドS兄弟に翻弄されル~
第28章 奪回

何も感じることがなかった。
暑い、五月蝿い…
その二つの " 単語 " が、頭の中に浮かぶだけだ。
「…五月蝿い、トリ」
浮かんだ単語を口に出してみる。
それをもって、彼の世界はまた自分だけの殻の内へ戻っていく。
“ …ラク、だな ”
冷たくもない大気に、微かにあがる湯気。
「あいつが消えると…こうもラクなのか」
カラスも鳶もいなくなった空に目を向けたまま、カルロの独り言は湯気に混じった。
........
“ ミレイ──…あんたが消えてから、俺の世界は元通り静かになった ”
余計な事を考える必要もない。
無駄な労力も使わなくていい。
元の世界は、こんなに生きやすかったんだな…。

