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星の島で恋をした【完結】
第18章 《十八》
   *

 舟はセルマをこの島へ運んだときと同じようにすぐに離岸した。

 セルマは透明から徐々に色を取り戻していく風に吹かれながら、ぐちゃぐちゃの気持ちのまま、星の島を離れることになった。



 島を離れると段々と気持ちが落ち着いてきた。

 もう二度と再び、あの島に行くことはない。だから忘れてしまおう。

 ここ数日の出来事は、療養先での想い出としよう。

 セルマは左手で右手首を握りしめて、瞳を閉じた。



 カティヤ王女の元に戻れば、前と同じ生活が待っている。

 ただ、セルマはアステリ持ちになってしまった。リクハルドはカティヤ王女に報告はしている。だからこそカティヤ王女はセルマに帰ってくるように言ったのだろう。

 カティヤ王女の側にいて、カティヤ王女を護って生きていこう。もしも可能ならば、嫁ぎ先にもついていって、一生をカティヤ王女に捧げてもいい。

 セルマの居場所はカティヤ王女のそばなのだ。

 そう、あの男の側でも、ましてや星の島ではないのだ。



 セルマは自分にそう言い聞かせ、甘ったるい感傷を切り捨てた。

 それと同時に別れ際にもらった手首の星を隠す布を捨てようとしたけれど……さすがにそれは思いとどまった。

 これは決して甘い感傷で残そうとしたのではなく、実用的な部分でのことだった。

 というのも、どういう仕組みなのか分からないが、セルマの持っている手持ちの布で手首を隠してみたのだがどんなに厚手の布でも虹色の星が透けて見えてしまったのだ。リクハルドから渡された布は薄いのにも関わらずそれがなかった。

 セルマが平穏に暮らしていくためにはそれは必要なことだったから、仕方なく手元に残した。
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