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星の島で恋をした【完結】
第20章 《二十》
*
アントンの命令に周りは動き始めたようで、慌ただしい音がした。しばらくすると外が静かになったことで、部屋の外にいた人たちは消火活動のためにほぼ全員がいなくなったと分かった。
扉の向こうに見えるのは、リクハルドとカティヤ王女、そしてアントン。
リクハルドはアントンを壁に投げ飛ばすようにして腕を離した。鈍い音を立ててアントンは壁に激突した。
「返してもらうぞ」
リクハルドの不機嫌な声に、アントンは壁に頬を付けたまま鼻で笑った。
「返す、とは?」
「茶色の髪の女性を浚っただろう」
その一言にセルマは目を見開いた。茶色の髪の女性とはセルマのことだろう。
リクハルドがセルマを助けに来てくれた。そのことに胸が熱くなる。
「茶色の髪……?」
しらばっくれるアントンにリクハルドは壁を力一杯殴った。セルマがいる部屋の壁が壊れ、穴が開いた。
部屋の中にいるセルマはそれを見て、さすがに血の気が引いた。
リクハルドを怒らせたら命がない、だから今後、怒らせるようなことをしてはならない、と。
「ほう?」
リクハルドの地を這うような低い声に、隣にずっと立っているだけだったカティヤ王女がようやく口を開いた。
「リクハルド、やりすぎです」
「やり過ぎじゃない。むしろ足らない。俺のセルマにこいつは触れたんだぞ? カティヤ、おまえも分かってるんだろうな」
「…………」
どうやらリクハルドは激しく怒っているらしいということは分かったのだが、カティヤ王女に対してまでその怒りを向けるのは間違っているような気がするのだが、どうなのだろうか。
「しらばっくれるというのなら、覚悟はできていると判断していいのだな?」
言っていることがかなりむちゃくちゃなのだが、これはセルマが出て行って止めるべきなのか否か。
アントンの命令に周りは動き始めたようで、慌ただしい音がした。しばらくすると外が静かになったことで、部屋の外にいた人たちは消火活動のためにほぼ全員がいなくなったと分かった。
扉の向こうに見えるのは、リクハルドとカティヤ王女、そしてアントン。
リクハルドはアントンを壁に投げ飛ばすようにして腕を離した。鈍い音を立ててアントンは壁に激突した。
「返してもらうぞ」
リクハルドの不機嫌な声に、アントンは壁に頬を付けたまま鼻で笑った。
「返す、とは?」
「茶色の髪の女性を浚っただろう」
その一言にセルマは目を見開いた。茶色の髪の女性とはセルマのことだろう。
リクハルドがセルマを助けに来てくれた。そのことに胸が熱くなる。
「茶色の髪……?」
しらばっくれるアントンにリクハルドは壁を力一杯殴った。セルマがいる部屋の壁が壊れ、穴が開いた。
部屋の中にいるセルマはそれを見て、さすがに血の気が引いた。
リクハルドを怒らせたら命がない、だから今後、怒らせるようなことをしてはならない、と。
「ほう?」
リクハルドの地を這うような低い声に、隣にずっと立っているだけだったカティヤ王女がようやく口を開いた。
「リクハルド、やりすぎです」
「やり過ぎじゃない。むしろ足らない。俺のセルマにこいつは触れたんだぞ? カティヤ、おまえも分かってるんだろうな」
「…………」
どうやらリクハルドは激しく怒っているらしいということは分かったのだが、カティヤ王女に対してまでその怒りを向けるのは間違っているような気がするのだが、どうなのだろうか。
「しらばっくれるというのなら、覚悟はできていると判断していいのだな?」
言っていることがかなりむちゃくちゃなのだが、これはセルマが出て行って止めるべきなのか否か。