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星の島で恋をした【完結】
第20章 《二十》
と悩む間もなくリクハルドは再度、なにかを詠唱した。やはり近くで激しい音がして、地面が揺れた。
「ユルヤナの一族を怒らせるとどうなるか身をもって知るがいい」
リクハルドの一言に、セルマは息をのんだ。
──ユルヤナの一族。
それは、セルマが幼い頃に聞いて、激しく心を揺さぶられた一族の名前だった。
一瞬、しんと静まり返ったが、アントンは再び鼻で笑った。
「おとぎ話に出てくる一族の名を騙るとは、カティヤ、おまえも地に落ちたな」
アントンはぶつけられた壁からようやく身を離し、それからリクハルドに対してではなくなぜかカティヤ王女に侮蔑の言葉を向けた。
それを聞いたセルマはカッと頭に血がのぼった。
セルマは怒りのまま走り出そうとしたが、アントンはなにかを思い出したのか、腹を抱えて笑い出した。
「あっはっはっはっ! 自分で言っておいてなんだが、おとぎ話か! 初めて見る顔だが、夢見がちなお姫さまにぴったりの従者だな!」
リクハルドがカティヤ王女の従者……?
そう言われて、セルマはふたりを改めて見た。
リクハルドはカティヤ王女を護るようにしてアントンの前に立っていた。言われてみればそれは従者と姫ととれなくもない。
そして本来ならば、セルマはリクハルドが立っているところにいなければならない立場だ。
そのことに気がつき、そしてセルマは星の島で思ったことを思い出し、ずきりと心が痛んだ。
──護られるより、背中を預けられるか、背中合わせでともに戦える相手がよい。
リクハルドならその相手にふさわしいのではないか──。
セルマはそう思ったから、リクハルドに恋をした。
そうだ。
セルマはリクハルドに恋をしたのだ。
その恋しい相手が、捕らわれているらしいセルマを救いに来てくれた。
だけど……。
今、護っているのは救いに来たセルマではなく、カティヤ王女。
どうしてセルマではなく、リクハルドはカティヤ王女を護っているのか。
セルマの中で嫌な感情が沸き上がりそうになり、慌てて首を振った。
「ユルヤナの一族を怒らせるとどうなるか身をもって知るがいい」
リクハルドの一言に、セルマは息をのんだ。
──ユルヤナの一族。
それは、セルマが幼い頃に聞いて、激しく心を揺さぶられた一族の名前だった。
一瞬、しんと静まり返ったが、アントンは再び鼻で笑った。
「おとぎ話に出てくる一族の名を騙るとは、カティヤ、おまえも地に落ちたな」
アントンはぶつけられた壁からようやく身を離し、それからリクハルドに対してではなくなぜかカティヤ王女に侮蔑の言葉を向けた。
それを聞いたセルマはカッと頭に血がのぼった。
セルマは怒りのまま走り出そうとしたが、アントンはなにかを思い出したのか、腹を抱えて笑い出した。
「あっはっはっはっ! 自分で言っておいてなんだが、おとぎ話か! 初めて見る顔だが、夢見がちなお姫さまにぴったりの従者だな!」
リクハルドがカティヤ王女の従者……?
そう言われて、セルマはふたりを改めて見た。
リクハルドはカティヤ王女を護るようにしてアントンの前に立っていた。言われてみればそれは従者と姫ととれなくもない。
そして本来ならば、セルマはリクハルドが立っているところにいなければならない立場だ。
そのことに気がつき、そしてセルマは星の島で思ったことを思い出し、ずきりと心が痛んだ。
──護られるより、背中を預けられるか、背中合わせでともに戦える相手がよい。
リクハルドならその相手にふさわしいのではないか──。
セルマはそう思ったから、リクハルドに恋をした。
そうだ。
セルマはリクハルドに恋をしたのだ。
その恋しい相手が、捕らわれているらしいセルマを救いに来てくれた。
だけど……。
今、護っているのは救いに来たセルマではなく、カティヤ王女。
どうしてセルマではなく、リクハルドはカティヤ王女を護っているのか。
セルマの中で嫌な感情が沸き上がりそうになり、慌てて首を振った。