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星の島で恋をした【完結】
第1章 《一》
 穏やかな海の上を波を切り裂くように進む舟上で、セルマは睨みつけるようにまっすぐ前を見ていた。舟はかなりの速度で進んでいて、セルマの結んでいない長い茶色の髪をかき乱した。

 しばらくそうしていると、青い海の向こうに黒い影が見えてきた。あれがこれからセルマが訪れようとしている島なのかもしれない。

 島影をさらに見ようと目を凝らしたが、黒い塊としか認識できなかった。
 しかし、島が近づくにつれ、それが島の影ではなく、島そのものの色だと気がついた。そればかりか、島から漂ってくる異様な雰囲気に落ち着かない気持ちになった。

 カティヤ王女自らの勧めでここに来たけれど、果たして大丈夫なのだろうか。セルマは初めて信頼する王女に対して疑念を抱いた。

 しかし次の瞬間、すぐにその考えを打ち消そうと強く首を振り──ずきりと左肩が痛んだ。呻き声を上げそうになり、セルマはぐっと唇を噛みしめて、声を飲み込んだ。

 カティヤ王女を疑うなんて、それは間違っている。ここに間違いないのだと、セルマは不安な気持ちを打ち消すために緑色の瞳を閉じた。
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