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星の島で恋をした【完結】
第7章 《七》
 提示された選択肢をセルマはすぐに選べなかった。

 セルマの居場所はカティヤ王女のそばである、ということは言い切れる。言い切れるが、今のセルマは呪いを受けた身であるから、すぐに帰るわけにはいかない。

 それでは、帰るためにはこの呪いをどうにかしなければならない。しかし、ここでこの呪いが解呪される保証はどこにもなく、それどころか島に拒絶をされてしまった。となると、帰る宛はなくなった。

 それでは、セルマはどうすればいい?

 男はセルマの無言をどう受け止めたのか。セルマに強い視線を向け、口を開いた。

「ここで朽ち果てたいというのなら、スキアを倒せ。その後に俺がおまえを奪うまでだ」
「……奪う?」

 セルマからなにを奪うというのだろうか。死ぬ気でいるのなら、男がセルマの命を奪うとでも言っているのか。

 分からずに首を傾げると、なぜか男は妙な色気とともに言い放った。

「俺に乙女を奪われたいのか、と言っている」
「────っ!」

 命ではなく、そちらを奪うと言っているのを知り、セルマは自分が真っ赤になったのが分かった。

 この男はなんということを言うのだろうか。

「どうするのか飯を食いながらでも考えればいい」

 そういって男は寝台の近くの卓の上に持ってきた食事を置いた。

「死にたいというのなら、無駄に命を散らせるよりも少しは役に立ってから死ね」

 取りようによってはひどい言葉を残し、男は去って行った。

 しかし、男の言い分はもっともだとはセルマも思う。思うのだが。

「…………」

 黒い蔦に絡まれていたセルマを助けることなくいなくなるのはどうなのだろうか。

 とはいえ、セルマが島へ足を踏み入れようとしなくなったからなのか、黒い蔦はいつの間にか消えていた。得体の知れないものが消えて安堵した。

 考えるのは後回しにするとして、せっかく用意してくれた料理を食べないのも申し訳ないと思い、セルマは手に取り、口にした。それらは思ったより温かくて美味しかった。

 セルマの目から勝手に涙があふれた。
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