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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
せめて、ここがどこなのかだけでも知り得ないものか。
梨花は燃え盛る焔をぼんやりと眺めながら目まぐるしく思考を回転させた。
ふいに、新たに加わった男が梨花を見た。
「それで、お前らは、このガキを連れて逃げ出したってわけか」
ミンスがしたり顔で頷く。
「ああ、そういうことさ。見てみろよ、まだガキだが、漢陽でもそうそう見かけねえほど
の上玉だ。妓房(キバン)にでも売り飛ばせば、たいした金になるぜ」
「だが、ガキを殺らなかったと右相大監に知られてみろ。面倒なことになりはしないか?」
と、小柄な男。
いや、と、ミンスは首を振る。
「そうならねえためにも、早いところ、このガキを売り飛ばすさ。一旦売り飛ばしてしまえば、たとえ右相大監であろうと娘のゆく方真相を知るのは難しいし、万が一、判ったとしても、たかが小娘一人に何ができるものかと思うだろう」
梨花は燃え盛る焔をぼんやりと眺めながら目まぐるしく思考を回転させた。
ふいに、新たに加わった男が梨花を見た。
「それで、お前らは、このガキを連れて逃げ出したってわけか」
ミンスがしたり顔で頷く。
「ああ、そういうことさ。見てみろよ、まだガキだが、漢陽でもそうそう見かけねえほど
の上玉だ。妓房(キバン)にでも売り飛ばせば、たいした金になるぜ」
「だが、ガキを殺らなかったと右相大監に知られてみろ。面倒なことになりはしないか?」
と、小柄な男。
いや、と、ミンスは首を振る。
「そうならねえためにも、早いところ、このガキを売り飛ばすさ。一旦売り飛ばしてしまえば、たとえ右相大監であろうと娘のゆく方真相を知るのは難しいし、万が一、判ったとしても、たかが小娘一人に何ができるものかと思うだろう」