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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
「確かにな、ミンスらが思い直すだけはある。まだガキだが、たいした別嬪だ。これであと十ほど歳取ってれば、俺たちが先に好きなだけ愉しんでから売り飛ばせるのにな」
 新たに加わった男が言った。
「馬鹿言え、大切な商品だぞ? 先に手を付けちまえば、高く売れなくなる」
 ミンスが生真面目に言った。
「手を付けるのはともかく、酌でもさせてはどうだ?」
 新たな男に下卑た視線を投げつけられ、梨花は身を竦ませた。鳥肌が立ったのは寒さや恐怖よりも本能的な嫌悪感のせいだった。
 小柄な男が呆れたように鼻を鳴らした。
「何を惚けたことを言ってる。幾ら別嬪でも、こんな乳臭いガキに酌させたって面白くも何ともねえ。お前のところのガキは確か、この娘っ子よりも大分大きいはずじゃねえのか?」
「ああ、いちばん上の娘が今年で十になった」
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