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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第5章 凍れる月~生涯の想い人~
梨花はゆっくりと進み、小屋の前に立った。そっと両開きの扉を押すと、古びた戸が軋みながら開く。
「チョンハ? そこにいるの?」
声を殺して呼んでも、なおも返事はない。
「ねえ、いるのなら、返事をしてちょうだい。チョンハ」
そのときだった。
薄い闇で満たされた小屋からぬっと手が突き出て、梨花の手首を掴んだ。
悲鳴を上げる暇もなく、梨花の口を分厚い手のひらが覆った。
「うぅ」
梨花は呻き声を上げ、懸命に抗う。しかし、哀しいかな、彼女を背後から羽交い締めにしているのは、女ではなく男のようであった。
―これは、チョンハなんかじゃない!!
梨花は恐怖と絶望に呑み込まれそうになりながらも、意思の力を奮い立たせた。
今、ここで混乱状態に陥ってしまっては、相手の思う壺だ。冷静にならなくては。
「チョンハ? そこにいるの?」
声を殺して呼んでも、なおも返事はない。
「ねえ、いるのなら、返事をしてちょうだい。チョンハ」
そのときだった。
薄い闇で満たされた小屋からぬっと手が突き出て、梨花の手首を掴んだ。
悲鳴を上げる暇もなく、梨花の口を分厚い手のひらが覆った。
「うぅ」
梨花は呻き声を上げ、懸命に抗う。しかし、哀しいかな、彼女を背後から羽交い締めにしているのは、女ではなく男のようであった。
―これは、チョンハなんかじゃない!!
梨花は恐怖と絶望に呑み込まれそうになりながらも、意思の力を奮い立たせた。
今、ここで混乱状態に陥ってしまっては、相手の思う壺だ。冷静にならなくては。