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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
「つまり、トンズラちしまえば、それで終わり、向こうは俺たちを追いかけてはこられないと?」
新顔の男がにやつきながら言い、ミンスは大きく頷いて見せた。
「それなら、早いところ、娘を売って漢陽をずらかろうぜ」
小男が言うのに、ミンスは声を上げて笑った。
「なに、そう焦ることはない。息子が逃げたとしても、すぐにすぐ役所に訴え出ることはねえだろう。幼い娘の方はともかく、息子は父親の仕事についてある程度は知っているはずだ。父親が何のために誰に殺されたのか、大方の推測はつくに違えねえ。何しろ、今や
領(ヨン)議(イ )政(ジヨン)より権力を持つ右相大監に両親を殺されたんだ。今、畏れながらと訴え出ても、かえって自分の生命まで危うくなる―それほどのことは甘やかされて育
新顔の男がにやつきながら言い、ミンスは大きく頷いて見せた。
「それなら、早いところ、娘を売って漢陽をずらかろうぜ」
小男が言うのに、ミンスは声を上げて笑った。
「なに、そう焦ることはない。息子が逃げたとしても、すぐにすぐ役所に訴え出ることはねえだろう。幼い娘の方はともかく、息子は父親の仕事についてある程度は知っているはずだ。父親が何のために誰に殺されたのか、大方の推測はつくに違えねえ。何しろ、今や
領(ヨン)議(イ )政(ジヨン)より権力を持つ右相大監に両親を殺されたんだ。今、畏れながらと訴え出ても、かえって自分の生命まで危うくなる―それほどのことは甘やかされて育