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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
ゆえに、梨花は昼間、父が政務のために王宮に出かけている間、そっと父の書斎に忍び込んだ。父の書斎には大きな書棚があり、分厚い書物が隙間なしに並んでいる。その様相は、梨花にはどれだけ魅惑的に映ることだろう!
そうっとその中の一冊を抜き出し、梨花は自室に戻り読み耽るのだ。
その点、七つ違いの兄松(ソン)俊(ジユン)は父の書物に居並ぶ本の山を見ただけで、頭痛がするらしい。松俊ですらまともに読み解けない書物を嬉々として読み耽る妹を横目で見ながら、
―お前は本当に変わった奴だな。本の虫だなんて、将来、大きくなったって、誰も嫁には貰ってくれないぞ?
と、笑う。
梨花もまた笑って
―あら、私はお兄さま(ヒョンニム)の妻にして頂くのだから、構いはしないわ。
と言ってやると、兄は真顔で返してくる。
―冗談じゃない。お前のように一日中、本に囓りついてるような女なんか、死んでもご免だ。第一、私が読めない本でも、お前はすらすらと読みこなせる。亭主よりも頭の良い女房なんぞ、貰うものじゃない。
―大きくなった私を見たら、お兄さまも気が変わるかもよ?
―馬鹿言え。
この後、二人は顔を見合わせて大笑いするのが常だった。
それでも、梨花は兄が大好きだった。松俊もまた、七つ下のこのやんちゃで学問好きという少々風変わりな妹を可愛がった。
そうっとその中の一冊を抜き出し、梨花は自室に戻り読み耽るのだ。
その点、七つ違いの兄松(ソン)俊(ジユン)は父の書物に居並ぶ本の山を見ただけで、頭痛がするらしい。松俊ですらまともに読み解けない書物を嬉々として読み耽る妹を横目で見ながら、
―お前は本当に変わった奴だな。本の虫だなんて、将来、大きくなったって、誰も嫁には貰ってくれないぞ?
と、笑う。
梨花もまた笑って
―あら、私はお兄さま(ヒョンニム)の妻にして頂くのだから、構いはしないわ。
と言ってやると、兄は真顔で返してくる。
―冗談じゃない。お前のように一日中、本に囓りついてるような女なんか、死んでもご免だ。第一、私が読めない本でも、お前はすらすらと読みこなせる。亭主よりも頭の良い女房なんぞ、貰うものじゃない。
―大きくなった私を見たら、お兄さまも気が変わるかもよ?
―馬鹿言え。
この後、二人は顔を見合わせて大笑いするのが常だった。
それでも、梨花は兄が大好きだった。松俊もまた、七つ下のこのやんちゃで学問好きという少々風変わりな妹を可愛がった。