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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第8章 終焉
自分でも知らず急ぎ足になった。家のすぐ手前まで来ると、走った。
荒い息を吐きながら表の扉を勢いよく開けると、家の中はしんと静まっている。
最初はよく見えなかったけれど、眼が慣れてくる中に、漸く薄い夜具に寝ている父の姿が見えた。かすかに寝息が聞こえている。
思わずホッとして、靴を脱いで家の中に上がり込む。
懐かしさに涙ぐみそうになりながら家の中を見回していた最中、梨花はあることに気づいた。
兄の荷物がなくなっている!
元々、家財と呼べるものなど無いに等しい貧乏暮らしだ。でも、家族皆の衣服を仕舞う箪笥や食器棚くらいはある。
梨花は慌てて箪笥の引き出しを開けた。いちばん上の引き出しを開けると、中はもぬけの殻だった。そこは兄の衣服を入れる場所と子どもの頃から決まっていて、母譲りの几帳面さを持つ兄らしく、いつもきちんと畳まれた衣服が入っていた。
荒い息を吐きながら表の扉を勢いよく開けると、家の中はしんと静まっている。
最初はよく見えなかったけれど、眼が慣れてくる中に、漸く薄い夜具に寝ている父の姿が見えた。かすかに寝息が聞こえている。
思わずホッとして、靴を脱いで家の中に上がり込む。
懐かしさに涙ぐみそうになりながら家の中を見回していた最中、梨花はあることに気づいた。
兄の荷物がなくなっている!
元々、家財と呼べるものなど無いに等しい貧乏暮らしだ。でも、家族皆の衣服を仕舞う箪笥や食器棚くらいはある。
梨花は慌てて箪笥の引き出しを開けた。いちばん上の引き出しを開けると、中はもぬけの殻だった。そこは兄の衣服を入れる場所と子どもの頃から決まっていて、母譲りの几帳面さを持つ兄らしく、いつもきちんと畳まれた衣服が入っていた。