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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
男は笑った。
「それで? 私が力を緩めてやれば、そなたはまた隙を見て脱兎のごとく逃げ出すのであろうよ」
どうやら図星だったようで、掏摸がわずかに眼をまたたかせた。
「生憎と私は腕力には自信があるが、走り競争をして、お前に勝つ自信はあまりない。みすみすお前を逃がすような愚かなヘマをしたくはないでな。さあ、出すものをさっさと出せ。片方の手は自由に動くのだから、出せぬことはないはずだぞ」
男に促されても、掏摸はいっかな財布を出す様子はない。
と、掏摸が顔を歪めた。
「うっ、くぅ」
「どうしても大人しく返さぬというのなら、私にも考えがある。お前のこの腕を今ここで、へし折って―いや、二度と使いものにならなくしてやっても良い」
先
「それで? 私が力を緩めてやれば、そなたはまた隙を見て脱兎のごとく逃げ出すのであろうよ」
どうやら図星だったようで、掏摸がわずかに眼をまたたかせた。
「生憎と私は腕力には自信があるが、走り競争をして、お前に勝つ自信はあまりない。みすみすお前を逃がすような愚かなヘマをしたくはないでな。さあ、出すものをさっさと出せ。片方の手は自由に動くのだから、出せぬことはないはずだぞ」
男に促されても、掏摸はいっかな財布を出す様子はない。
と、掏摸が顔を歪めた。
「うっ、くぅ」
「どうしても大人しく返さぬというのなら、私にも考えがある。お前のこの腕を今ここで、へし折って―いや、二度と使いものにならなくしてやっても良い」
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