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激情パラドックス
第4章 別離の理由
レストランの制服に身を包み、いつも通り機敏に働く美弥を眺めている俺の視線は、さながらエロおやじ的なものだったことは認めざるを得ない。その姿を見ていられることに幸せを感じながら、早番の俺は職場を後にした。

家に着くと、ドアの前でさくらが待っていた。
「おつかれさま」
「ああ。早かったんだな」
ぎこちない空気が流れる中、鍵を開けてさくらを部屋に通した。
「先に荷物まとめちゃうね」
「うん」
衣類、お泊り道具など、いくつかの散らばった私物を、彼女は黙ってかき集めた。虚しい光景だ。けど別れの時なんて、きっと誰だってこんなものなんだろう。さくらの背中はもう、俺の知ってる彼女じゃないような空気を纏っている。
「えーと……これでもう何もないと思う」
「そっか」

…………気まずい沈黙を破ったのは、さくらだった。

「……あのね、浮気、の、ことなんだけど……」
「うん。何か数人とヤッてるらしいって聞いたんだけどさ俺。ほんとなの?」
「……本当よ」
「へぇ……。一体どうしたんだよ」
まるで客観的に相談を受けているかのように俺は尋ねた。だって、こんなみじめなシチュエーション、そうするしかない。
「うん……。私もう28だし……結婚したいの」
「ああ」
やっぱそれか。けどなんで俺じゃねーんだよ。あとなんで数人いるんだよ相手が。
「大和はさ……、結婚とか考えられないって、言ってたじゃない?」
「ん……、ああ、まぁな」
適当な話の中でそう言ったことは確かにあっただろう。
「私が……、じゃあ他の人見つけて結婚しちゃおっかな?って言った時も、ああそれでいいんじゃない?って……言ったよね」
「え……、そんなこと言ったっけ俺」
「言ったのよ。あとね、私が職場の人に言い寄られてるって言った時も、適当に流したよね?」
え……そんなことあったか?ってぐらい、記憶になかった。
「……ほら、覚えてもいないんでしょう?そういう適当な態度で、私のこと考えてたんだよね。それがすごくわかったから、もう諦めなきゃって……」

そう言ってさくらは泣き出した。あ……、やめてくれ、この展開。めんどくさい。
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