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花咲く夜に
第2章 移転
貴斗は反射的に走りだし、
女がロープに顔を吊った瞬間に飛び付いた。
椅子の端に乗り上げて女を抱えて輪から外して、
着地したのだ。
(死にたいと言ったり、
『あなたがなって』と喚いたり、
腰を抜かした挙げ句ラーメン完食したなぁ……)
しゃがんだ格好でジィーッと女を見た。
(青ざめてるけど、
目鼻立ちのはっきりしたキレイな女だな。
だけど……
死んだって得もないのに、馬鹿じゃないのか)
『……立てるか?』
貴斗はラーメンの丼鉢をテーブルの上に置き、訊ねた。
女は『うんしょ、』
と手を着いて起き上がろうとした。
『……あっ……』
へなへなとへたり込む。
『腰が抜けたままか……。ラーメンは汁まで吸い切ったのに』
嫌味を混ぜて言うと、
女は『美味しかったから………玉子も』
と顔を赤らめ俯いて呟いた。
『……アナタ名前は?俺は葛城貴斗』
『……美藤めぐると申します』
聞けば隣県のミカン生産日本一の市に自宅があると言う。年齢は同じだった。
(地元っぽくはないよなぁ。)
同じ瀬戸内地方で田舎に変わりはないが、
田舎であるが故にちょっとした言葉のイントネーションの違いから地元の人間かそうじゃないか分かってしまう。
『帰れないね。』
貴斗ははぁ、とため息を吐いた。
『しゃあない……
今日はそこで寝て。
あ、トイレ行きたかったら起こして。
運ぶから』
『………え、
でも』
『イヤもう仕方ないから。眠いから、俺寝る………』
欠伸が出た。
仕事柄朝が早いため、
夜は遅過ぎるとさすがに眠くなる。
時計を見ると午前2時だった。
貴斗は毛布を被り、
女――――めぐるに背を向けて丸くなって眠りについた。
女がロープに顔を吊った瞬間に飛び付いた。
椅子の端に乗り上げて女を抱えて輪から外して、
着地したのだ。
(死にたいと言ったり、
『あなたがなって』と喚いたり、
腰を抜かした挙げ句ラーメン完食したなぁ……)
しゃがんだ格好でジィーッと女を見た。
(青ざめてるけど、
目鼻立ちのはっきりしたキレイな女だな。
だけど……
死んだって得もないのに、馬鹿じゃないのか)
『……立てるか?』
貴斗はラーメンの丼鉢をテーブルの上に置き、訊ねた。
女は『うんしょ、』
と手を着いて起き上がろうとした。
『……あっ……』
へなへなとへたり込む。
『腰が抜けたままか……。ラーメンは汁まで吸い切ったのに』
嫌味を混ぜて言うと、
女は『美味しかったから………玉子も』
と顔を赤らめ俯いて呟いた。
『……アナタ名前は?俺は葛城貴斗』
『……美藤めぐると申します』
聞けば隣県のミカン生産日本一の市に自宅があると言う。年齢は同じだった。
(地元っぽくはないよなぁ。)
同じ瀬戸内地方で田舎に変わりはないが、
田舎であるが故にちょっとした言葉のイントネーションの違いから地元の人間かそうじゃないか分かってしまう。
『帰れないね。』
貴斗ははぁ、とため息を吐いた。
『しゃあない……
今日はそこで寝て。
あ、トイレ行きたかったら起こして。
運ぶから』
『………え、
でも』
『イヤもう仕方ないから。眠いから、俺寝る………』
欠伸が出た。
仕事柄朝が早いため、
夜は遅過ぎるとさすがに眠くなる。
時計を見ると午前2時だった。
貴斗は毛布を被り、
女――――めぐるに背を向けて丸くなって眠りについた。