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花咲く夜に
第2章 移転
そして、
『小さいタンクに移して持って来よう』
と言う男の後ろを歩き、

桜のある山から200メートルほどの距離にある農家に着いた。


農家の玄関に入った途端、今度は腰が抜けて立ち上がれなくなった。


男―――葛城貴斗は『俺、祖母ちゃんと2人だから』と言い、

2階の部屋へおんぶして運んでくれた。



錯乱した挙げ句に腰を抜かして立てず、
運ばれて来た。。


そしてラーメンを作ってくれて、
男のベッドにて上半身だけ起こして食べたのである。

『………すみませんでした』
ラーメンの容器を手渡しながらめぐるは謝罪した。


『イヤ別に良いけど…………』
(何なんだコイツ……)

―――何時ものように桜の見回り当番で巡回中だったのだ。

谷津川村は代々、
地元の人間だけで『醍醐山桜』
を見回る慣習がある。


というか他に桜を存続できる地域が無いのだ。
近隣にはこの村しか、
人間が揃っている集落は無い。


特に春の宵は桜が咲き乱れるがゆえに、
稀に来る観光客らがゴミを捨てていく。

ゴミ拾い・見回りが主な当番で、
週に1度順繰りに回ってくるのだ。
回覧板が回るのと同じ。


特に変わりが無いことを確認して、
(たまには良いかな)
とビールを飲みながら山の麓で桜を眺めていた。

すると、
この女が坂を上がり山を登って首を括ろうとしているのを見つけた。



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