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花咲く夜に
第3章 興味
貴斗は夕方5時にバイトを終えると、
車を自宅と逆方向へ走らせた。


曽根崎の口から出た、
〔大阪〕―――……


もちろん曽根崎は全くの世間話で家族旅行の話をした。

が、
貴斗は嫌悪と不快に囚われた。

バイト中は紛れたものの、タイムカードを押して車に乗り込むと黒い感情が波のように押し寄せてきた。


(何なんだよ、
普段テレビやネットで耳にしても何も感じなくなってたのに!)


だだっ広い田舎道。
二車線道路をひたすら真っ直ぐ走る。

ハンドルを持ちながら、
貴斗は苛つきからタバコを咥えた。


〔タカト、言うことを聞いて頂戴〕

〔ねぇ、タカト私のこと好き?ねぇ、好き?〕
有名な水族館の昏(くら)い通路………

映像と、ある男女の声が代わる代わる脳内に響いた。


『……っきしょう!』
舌打ちをして、
車を路肩に停車した。


スマホを取り出して【ビトウめぐる】をコールした。

めぐるはその頃、
貴斗宅の台所にて昭恵と夕飯の準備をしていた。


スマホは部屋に置きっぱなしである。

『何で出ないんだよ、
あの女…………』

勝手な怒りだ。


だけど、
不意に声が聞きたくなった。
あの、淡々とした抑揚の少ないめぐるの声と話し方は………
ひどく貴斗を落ち着かせた。

(見舞いに行かなきゃ…………)
土曜の夕方、
病院や施設などは休診日だけれど……
仕方ない……。

あの人は、
どんな形であれ自分の母親なのだから……


貴斗は、そのまま夜は帰らなかった……………
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