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第1章 その1

K府の中央に位置する温泉街。
旅館・ホテルや宿が建ち並ぶ。

バスは温泉街を抜け、
山の中に向かう。

（山にあるのか）

到着してバスから降りると、
シンプルで大きなホテルが森の真ん中に聳え立っていた。

階数もかなりあり、高い。
思わず見上げていると、
30歳くらいの長い黒髪を束ねた美しい女性が小走りに寄ってきた。グレーのスカートスーツ。濃いブラウンのパンプス。

深々と頭を下げて微笑し、『お待ちしておりました。田川晴敏さまですね。
この度はご予約ありがとうございます。
お客様案内係の佐藤ゆりでございます』


（彼女が、電話の…）

見惚れてしまう。

少し垂れ気味の大きな目。小さい造りの鼻と唇。
唇の右下にはホクロがあって色っぽい。細すぎない丸みのある色白体型。
黒髪が美しく靡いた。