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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
けれど、他のメンバーから見れば、どうだったろう。
みゆりちゃんはてんちょーのお気に入りだからと、影で悪口を言われるようになった。
贔屓されているのだと。
だけどそのお気に入りというフレーズがなんとも私の感情をふわふわとタンポポの綿毛のように高く高く浮き上がらせた。
私は、彼のお気に入り、なのだ。
リフレインを繰り返す。
その都度胸の真ん中が熱くなった。
どれだけのファンから愛されるよりも、何百倍も何千倍も何億倍も嬉しいと叫びたいくらいだった。

アイドルとして失格だった。

でもそうやって過ごすうちに、みゆりちゃんは遅刻しても怒られないからとか、お会計ミスっても無かったことにしてもらえるんだってとか、根も葉もない嘘がそこかしこから沸き上がるようになった。
そんなことは一切ない。
むしろ八反田さんは仕事に関しては私にはより厳しい目で見て叱るのだと一つ一つ芽を潰しても、るかちゃんとくるみちゃん以外は皆、関心を持ってくれなかった。
それで納得した。
皆、私の悪口を広めたいだけなのだと。

「風間、爪はちゃんと切ったのか?アイドルと言えども飲食店なんだから許さんぞ。ファンもそういった所に印象が残るんだ。それからもうちょっと髪を結いあげろ。パフェにでもくっ付いたらどうする」

八反田さんは私を捕まえるとそんな注意をする。
やっぱり甘やかされてなんてないと思う。

「……髪結ってない子もいますよ……目立たないけどマニキュア塗ってる子もいますし……」

「あいつらは言っても聞かないんだよ。何れどうにかする」

それなら何れどうにかなった時に、私も直しますとは口答え出来なかった。
私は渋々、爪を限界まで短くカットして、折角綺麗に作った編み込みを解いてお団子ヘアーに纏めた。

「よろしい」

こんな風に、八反田さんに好かれるのは骨が折れるのだ。
そしてふと脳裏に過ぎった。
私は一流アイドルになることと、八反田さんに愛されることのどちらを優先したいのだろうと。
このままではどちらにしろ、どっちつかず夢で終わるような気がしてならない。

そう考えていた矢先だった。
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