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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り

「だけど、あの事件で電話の男の人がほんとに八反田さんだって解った途端、全然お話してくれなくなっちゃって……。前は多少、気まずいだけかなって感覚はあったんだけど……今回ばかりは違うって肌で感じるの!遠く離れて行っちゃったの!どうしよう!どうしたらいいと思う!?黒咲くん!!」

黒咲くんは裏庭のベンチに私と腰掛けながら話に耳を傾けてくれていた。
最近は珍しくお弁当を持参してくる。
今までは嶋くんと食堂でうどんやらカレーやら食べていたらしいのに。

「……なんつぅか、あの人も見掛けによらず、ヤルよねぇ……。そもそもさ、話を聞いて思ったけど別人なはず無いじゃん?違うって簡単に否定されただけで信じ込んじゃう風間さんて、純粋っていうか人を疑わないイイコちゃんの塊だよね」

卵焼きをお箸で割って食した彼は、一噛みしたあと、まずっ……と無理矢理お茶で胃に流し込んだ。
このイケメン、新しく彼女でも出来たのだろうか。
それとも例の大金持ちの飼い主さんにでも作って貰っているんだろうか。
どちらにせよ、あまり興味は沸かないけど。

「イイコじゃないよ……。私は八反田さんを信じただけで……」

「だからそれが純心ってこと!辛くなったんじゃないの?自分とは違う純粋無垢を前にして居たたまれなくなったんだよ。あの人、最初からお綺麗じゃないんだから。顔と同じくらい、心も醜いの。醜い化け物じゃん!嘘つきの、性欲の塊でしかないじゃん!」

今までの話を総合するとさ、と左手を掲げて豪語する黒咲くんに、私は声を荒げてしまった。

「そんなことないよ!八反田さんは、いつも真面目で、曲がったところが無くて、それで……っ!」

「風間さんは、じゃああの男の何を知ってるの?あの人の全てを知って、それでそう言ってるの?」

「そ、それは、知らないけど……」

「キミは飛んだおばかさんだね」

「な……さっきから黒咲くん、酷いよ!なんでそんなことばっかり……」

「なら風間さんのやつ口直しに頂戴」

たとえニヤついていても、それが彼の大きな魅力となる。
それ程までに端正な顔立ちのこの黒咲颯は、八反田さんの無作法な造りとは大違いで、世の女性達はこういう男の子を王子様だと夢見、心から求めてやまないのだろうことは、もう判りきった話だった。
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