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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第11章 エンジェル
「黒……」

「……ごめんなさい!」

私が喋ろうとしたのを遮って、彼女は頭を下げた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

立て続けに謝る彼女を見て、私はそれ以上、口を噤んだ。
彼女を責める権利など私にあるはずはないのだから。

「あの、謝らないで下さい……私……」

腫れた目に、なお涙を溜める彼女は、それでも謝り続けていた。
私に謝っているのか、旦那様に謝っているのか、息子さんに謝っているのか……。
私だってまだ子供だけど、それはなんとなくわかっていた。

「もうやめろよ。みっともない」

八反田さんが、二四也くんを抱き上げて彼女を叱った。

「でもっ……」

彼女は顔を振り上げる。

「とりあえず、二四也が見つかった。それでいい……」

彼女はまた、泣いた。
泣き虫なのも誰かに似ている。
……この感じ……この面影……。
確か私がよく知る……。

「この際、少し話そうか……」

八反田さんは追想に耽る私を眺め、息子の頭を撫でた。
パパに抱っこされ、うとうと幸せそうな顔の二四也くんが目を瞑る。
なほこさんはそんな二人を遠巻きに見ていた。
一見すると、この3人は何の不自由も柵みもない幸せな家族に見える。
だけど八反田さんは、なほこさんに二四也くんを預けると私にこう聞いた。

「みほこさんはまだ、この家に帰ることは……あったりするのか?」

その言葉に、私は……ああ……。

全部わかった。

分かってしまった。

思い出してしまった。

……そうだ。



あの日。



あの時。



満員電車で私を助けてくれたのは……。




走馬灯のように駆け巡る私の頭の中、記憶のピース達。



……パズルは間もなく完成する。



ようやく私はその答えに、辿り着こうとしているのだと感じた。

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