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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第13章 運命の赤い糸
「……お互い知らぬ関係じゃない。かつての仲もある。君も君で随分多忙なことも理解している。だがテーブルの上にあったあの紙は離婚届けだろう。なほこさんとの関係も清算するのなら、二四也くんの面倒を見る人間が必要になるんじゃないのかね?」
靴ベラに足を乗せ淡々と身支度を整えるお父さんは、いよいよネクタイをきつく締め終わると私達に向き直った。
「みゆりはそれにうってつけだろう?」
じゃあ行ってくると最後に残してお父さんは扉の向こうに消えた。
昔から私達家族に対しても高圧的な人だった。
少しでも機嫌を損ねると自分勝手に振る舞う嫌な奴だった。
私は、やっぱりそんなお父さんが、まだ苦手なんだ。
「みのるさんは変わらないな。あの人はいつも完璧主義だから」
そうでもないですよ!
お父さんはいつも家に居るときはゴロゴロしてばっかり!
何もしないもん!
八反田さんの方が完璧だもん!
私の声にならない言葉を理解してくれた八反田さんは頭を掻き掻き、
「あれはあれで、みのるさんはみゆりの心配を心からしているんだ。でもそれじゃあなかなか伝わらないよな」
私にもう一度振り返った。
掻き混ぜられた髪がサラサラ戻るのが好きで、どうしても目で追ってしまう。
私に言い聞かせるように、声の絡まった喉を撫で付けてくれる八反田さんがとても恋しい。
「さてどうしたものかな……」
真剣な眼差しにドキドキする。
「やっぱりお前は仔猫みたいだな」
指先が気持ちよくて頬ごと擦り寄ってしまう。
ゴロゴロ甘えながら喜ぶと八反田さんはふっと破顔して……。
とうとう言ってくれた。
捨てられた仔猫の私は喜んでご主人様の腕に抱かれる道を選んだ。
「……俺んち来るか?」