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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第13章 運命の赤い糸
「フミスケ君……折り入って相談があるのだが……」
お父さんは今、何を言おうとしたのだろう。
言葉を失った私に向けお父さんは溜息を吐くと、それから話しを続けた。
「……何でしょうか?」
答える八反田さんの低い口調も、どこか悲しい音色を帯びている。
「みゆりはとことん俺が嫌いらしい。しかしこうも頻繁に倒れられてはこのまま一人で暮らさせていく訳にもいかん。しばらくでいい。この子の体調が戻るまでどうか預かってくれないか」
おそらくこれは秘書だった頃のみほこお姉ちゃんにも告げたことのある台詞だと直感した。
お父さんは面倒になるといつも誰かに私を押し付けたがるのだ。
「虫が良すぎるのは重々承知の上だ。だが君に、みゆりは幼い頃から懐いている」
「いや、しかしそれは……」
八反田さんは困ったように眉をひそめ少しだけ紅潮した。
そんな八反田さんの服の裾を掴み私はその先を引き止めた。
それは恋だと。
一人の女として八反田さんに昔から欲情していることをお父さんに説明して欲しくなかった。
「残念だが実はもう日本を発たなくてはならなくてね。息子の我が儘の為に時間ギリギリまでスケジュールを押しただけだったんだよ」
お父さんはそれだけ言ってジャケットを羽織ってしまい、いそいそと玄関先へと向かった。
私の方には目もくれない。
「みゆり。父さんはまた少し帰れないが、フミスケ君の元でいつも通り好きに過ごしなさい。だが、面倒は起こすな。じゃあな」
「ちょ、ちょっと待って下さい!僕の返答がまだ……」
「YESだ。君は私にYESとしか言えないはずだ。私の言葉を拒否する権利など無いだろう。過去の事とはいえ君の罪が消えた訳ではない」
「いえ僕のことはいいんです!しかしそれでは余りにも……!」
余りにも、何だろう?
八反田さんは哀しそうな顔をしていた。
なんだか私の代わりに傷付いているような気さえしてくる。
それともお父さんの代わりに?
私は彼の心情を慮りながらもう一度飛びついてみた。
今度こそ振り払われなかった。
むしろ抱き止めてくれたこの人に心から感謝したいくらいの想いが込み上げた。