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第3章 開花する蕾

その日はやってきた。
小田は奈津美を部屋に上げた。

実家も近いが、かつての部屋は倉庫として利用している。

金銭的に実家が通いがよいのだが、家賃は会社との折半なので思い切って借りた。
二川から「１ｋではコンディションが下がる」と言われ、２ｋを借りている。


奈津美にガスコンロの隣に置いたカセットコンロと珈琲メーカーを指差し、「珈琲だ。砂糖はもともとないからいらない。ミルクはほんのちょっと入れてくれるか」と言う。

ほんのりと珈琲の芳醇な匂いが漂う。
珈琲の香りは小田にとってフレグランスだ。

珈琲を嗜んでいる間に奈津美はシャワーを浴びている。


その水音を聴きながら、飲む珈琲は格別だった。