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いろごとプリズム
第5章 悠真の本気
花見川のディープキスで火照ってしまった身体と胸の鼓動が鎮まらないままサーヤは帰宅し、約束通り悠真の部屋に行った。この前告白され、胸に触れられた感触はまだ生々しい。けれど悠真はまるで何もなかったかのように、普段通りの態度だった。

「で?どこまで進んだ?ゲーム」
「あ、うん……全然やってないから今やる!」
「ったくよー、早く通信できるようにしろよー」
「……ごめん」
花見川のことは、悠真には話したくない……。

「……あのさ、兄貴とは連絡取ってんの?」
少し切り出しにくそうに、悠真が尋ねる。
「あ……うん、そうだね、そういえば……全然だな……」
遠恋中の彼氏であるはずのショウマのことは、サーヤにとってもはや言われるまで思い出さないような存在となっていた。
「ふぅん。そんなもんなのかねぇ」
「私もなんか、遠恋ってちょっと、実感わかないっていうか……、今いろいろ忙しいし。きっとショウマ君もそうなんじゃない?名古屋に引っ越したわけだし大学生活も始まったばかりだし、尚更だよね」
サーヤは特に忙しくはない。けど、心がいろいろ忙しいだけ。
「……ふーん」

――なんとなく気まずい沈黙。サーヤは黙々とゲームを進める。

本当なら、遠恋中の彼氏に、あなたの弟に告白されキスをされました、だとか、文芸部の後輩にもキスをされました、とか、離れて寂しい、とか、言うものなんだろうか。そんな余計な心配をかけて何になるというんだろう……とサーヤは考えていた。

(ショウマ君とは離れてても全然平気だ……ってことが逆にわかってきてしまってるのかも……これって……、彼女としてどうなんだろうな……やっぱり私、ショウマ君のことそんなに好きなわけじゃないのかな……)

いつの間にかゲームの手も止めてぼーっと考えていたところで、悠真が口火を切った。
「あ、そう言えば。こないだ言ってた新曲さ、ある程度形にできたんだ」
「えっ、すごいね!さすが悠真……カミマP、仕事早い」
「ちょっと聴いて。これ」
悠真はパソコンでその曲を再生した。切ないメロディとアップテンポな曲調がミスマッチで、ピアノ音がきらめき、惹きこまれる仕上がりだ。
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